おかえりなさいアイちゃん

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一つの目標が達成されると、それまでの過程が 随分 愛おしく感じられるものである 




退院の日が近付くにつれて、アイちゃん部屋の中も整ってきた。

エアコンの調子 よーし!
箪笥の中身 よーし!
介護に必要な、常備品、すべてよーし!

ベッドに入っているアイちゃんから、外庭の花や景色が よく見えるようにと、ベッドを置く位置を 引き戸に対して垂直に、出来るだけ窓に近く、でも介護し易いように 人一人通れるスペースは空けて、置くことにした。

ベッドの長さが、部屋の奥行きギリギリいっぱいなので、片開きのドアを残しておいたことが 大変役立つ。

その 人一人通れるスペースに行くのには このドアしかないからだ。

トシちゃんの、読みが当たったということだ。


全て整ったアイちゃん部屋を見渡して、満足に浸っていた私だが、横にいるトシちゃんの顔が何故か暗い。

おいおい、トシちゃん ここは笑顔のとこだろ?

「ベッドのシーツ 他のやつ 無いんかい?」

突然 そんなことを聞いてきた。

「新品の綺麗なやつ これしか無かったで。」

「違うやつ 買ってきてくれ。」

「べつに ええけど、何でまた?」

「これじゃ 気色悪なる。」


トシちゃんに そう言われて、改めてベッドを見てみた、、、、、、あっ!・・・・・・・納得!


そうなのだ。 私が新品で綺麗と思って 掛けたシーツは、少し光沢のある白いシーツ。

おまけに、枕元あたりに、白糸で大きな菊が刺繍してあったのだ。

デリケートなトシちゃんは、それを見て、有らぬ想像をしたようだ。

プッ!と吹き出しそうになるのを我慢して、自分のデリカシーの無さを反省 (ー_ー)!!。



急いで 淡いピンクのシーツを買ってきて、掛け替え 一件落着!





そして、いよいよ晴れて退院の日。


お世話になった、チームアイちゃんのスタッフの方々に御礼を言い、介護タクシーに乗ったアイちゃん。

今回は道のりが短いので 車椅子のまんま乗り込んだ。

付き添いは 今回も姉。

姉はこの二か月間 一日置きに 片道3時間もかかる このリハビリセンターへ、通ってくれていた。)


トシちゃんは、アイちゃん部屋を暖めておくのだと、家で帰りを待っている。


最初に見た時 桃源郷のようだと言った街。

この街が見えなくなる最後の交差点をまがると、訳もなく 嬉しさがこみあげてきた。




さあ 着いた!

トシちゃんが予想通り玄関先に 立っている。

喜びを隠しきれない様子で、アイちゃんの車椅子を押して部屋へ入っていく。

待っている間 きっと鼻歌でも歌っていたに違いない (^−^) )


センターで習ったように アイちゃんの胸元に入り込むように介助して トシちゃんは上手に車椅子からベッドに移行していた。


「おかあちゃん おかえり、 もう どっこも行かんでええんやで。」  

トシちゃんが そう言うと アイちゃんも ここがどこか少しわかったみたいで、

「帰って来たんか?」

と 聞き返しながら、目をキョロキョロ動かして 辺りの様子を見ていた。


そうだよ おかえりなさい アイちゃん!!





さーて! いよいよ 在宅介護が始まるよ!!!

退院間近!

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最初良ければ 全て良し!?



トシちゃんの、「一日お泊り介護体験」も済み、いよいよ退院が近づいてきた。

そーなんです! このセンターはお泊り介護部屋なるものがあり、夜の介護体験ができるのだ。

馬鹿にしては いけない。 夜のアイちゃんは、掛布団を落としてみたり、何度も話しかけてきたり、、と昼間と違っていて、トシちゃんは眠れなかったそうだから、これは在宅介護前に知れてよかったと思う。



再び、チームアイちゃんスタッフと私達との話し合いが持たれた。

今回は、退院後の生活で、お世話になる人たちや、アイちゃん本人も加わってのものだ。


アイちゃんは、介護認定は「要介護5」なので 様々な介護サービスが持ち点数の範囲内で受けることができる。

なので、ケアマネさんと相談して、話し合いには、訪問看護の看護師さん2名 訪問リハビリの療法士さん、 それに介護用品レンタル業者さんにも参加してもらった。

業者さんに参加してもらったのは、正解だった、

ベッドの種類を選ぶにしても、車椅子にしても、センターのアイちゃん担当療法士さんに、アイちゃんに一番適した、素材や寸法のものを、直接 話し合ってもらいながら 決めることができたからだ。


今回は、リハビリセンター介護から、在宅介護への「引き継ぎ会」のようなものである。

待ちに待った 退院の日も決まった。

何と!私の??才の誕生日ではないかいなァ!!

(そういえば、アイちゃんが 倒れて病院に運ばれたのが、トシちゃんの誕生日だったな (’。’) )


アイちゃんは、話し合いが 自分のことについてだということを理解していたみたいで、ずーーっと 難しい顔をして聞いていたが、 退院と言う言葉に 即行で反応した。

「帰れるんか?」

と、トシちゃんに聞いていた。

「そうやで 今度は ほんまの、お母ちゃんの家に帰るんやで。」

トシちゃんにそう言われて、 久しぶりに満面の笑みを 見せてくれた、アイちゃんだった (^_^)*



最初から 最後まで、本当に 至れり尽くせりの 看護や、リハビリを受けられたことを 心から感謝したい

番外編 ある青年

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人間は、「まさか自分が!」 と思うことに出遭うことで、本当の生きる力 を身につけるのかもしれない。 



ある日の午後、アイちゃんが爆睡していたので 私は玄関ホールの待合室でテレビを観ていた。

実は お気に入りのソファーがあって、そこに深く腰掛け、缶コーヒーを飲むのが、ささやかな楽しみなのだ。

「隣りに座ってもいいですか?」

不意に声を掛けられ驚いたが、 ソファーはみんなのものだから断る理由もない。

「どうぞ。」 と言うと その青年はドスンと落ちるように座った。

見ると 右足の膝から下にサポーターのようなものをしていた。

「このソファー足に負担があまりかからなくて、座ってる時 楽なんですよ。だから いつも ここにすわるんです。」 と青年が言った。


よほど 人恋しかったのだろうか、初対面の私に 色々なことを話し始めた。


数か月前、高速道路をバイクで走っていて事故に遭い、気が付いたら 病院のベッドだったそうだ。
一命は取り留めたけれど、右足に後遺症が残り、このセンターでリハビリをしているとのことだ。
リハビリを頑張ったおかげで、ほんの少し引き摺るが 歩けるようになった。

来週 退院だというので 私も嬉しくなって 「おめでとう!!」と叫んでしまった。

ところが、彼の表情が 何故か冴えない。

どうしたのか聞くと、怖いのだと言う。

職場も 休職中にしてくれているのに、復帰するのが、怖いのだと言う。

同期の仲間は、もう仕事にも慣れ どんどん先をいってるんだろうな、自分は追いつけるだろうかとか、追いつくどころか、以前のように、仕事をこなせるんだろうか、、ほんとに自分のデスクはまだあるのだろうか、とマイナーなことばかり、考えてしまうのだそうだ。

半年余りの 仕事の空白は、社会人一年生の彼には あまりにも長く辛いものだったに違いない。

励ます言葉も見つからない私は、
「ぼちぼちと慣れていったら ええやん。」
と、屁のツッパリにもならないようなことしか、言えなかった。

彼は、少しだけニコッとして、リハビリの時間だからと、行ってしまった。



その後、限られた空間の中なのに、その青年と会うことはなかった。



センターには、アイちゃんのような高齢者だけでなく、若い人も たくさんいる


みんな、また、元気に社会復帰できるように、一生懸命リハビリに励んでいる

どうか、この頑張りが それぞれの未来の幸せに続いていますように・・・。

プチ改造ビフォーアフターその2

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「昔とった杵柄」というのは、幾つになっても 生きているものだ。



リハビリセンターに行く前に 実家に寄ってみた。

やってるやってる!

大工のおっちゃんも来てくれている。おっちゃんと言っても 御歳80前後である。

二人は、目以外 顔中に 手ぬぐいを巻いて、部屋の中側の壁に青いビニールシートを掛け、土間側から  土壁を 木槌のようなもので、叩き壊していた

「片開きのドアはな、残しといた方が、後々便利や思てな。 横に、引き戸を造ることにしたんじゃ。」

と、何故か ちょっと得意げに話してくれた。
(これが、後々ほんとに 置いといてよかったことになる。)


私が着いたのが、丁度10時頃だったので、お茶の用意をした。

「一息ついて お茶でもどうぞー。」、、、、返事がない。

「お父さん!一回 休憩してもらいなよ!」

キリのええとこで、休むさかいに 置いといてくれ。」

そうなのだ、トシちゃんも おっちゃんも無口で朴訥、仕事を始めると二人とも 自分時計で動く。

会話もほとんどないのに、それにトシちゃんは大工でもないのに、仕事は 「あ うん」の呼吸で進んでる。
不思議だ、幼馴染みで ずっと同じ村で暮らしていると、こういうものなんだろうか・・。


声をかけてから、1時間もしたころ、やっとお茶を飲みにきた。

庭になっていた柿を剝いて出していたのだが、二人とも、一口食べるなり、
「あかん!柿は硬いで、噛まれへん」

「あんたも 入れ歯か?わしも入れ歯や。コンニャクでも噛みにくいでのう。」
と お互いに 歳をとったことを かみしめるように、でも楽しんでるように、入れ歯談議に 花を咲かせていた。
< スミマセン。次はゼリーかカステラでも持ってきます(^。^;) >



改造中は できるだけ、センターに行く前に 実家に寄っていたが、いつ行っても二人は 黙々と仕事に勤しんでいた。
その仕事の 早くて、綺麗なこと!!  無駄がないというか、、、そう!段取りがいい!!

おっちゃんは、鉛筆を耳に挟み 釘を数本口にくわえ、水を得た魚の如く イキイキしていた。

何歳になっても、自分の腕を必要とされる事は この上ない喜びなんだろう。



そんなこんなで、たった一週間ほどで、改造が終わった。

化粧板が 敷かれた、ピカピカの床が 「二人の仕事は、どんなもんだい!」と言ってるように思える。

引き戸の前部分を、広く 踊り場のようにしてあるので、車椅子の方向転換も 難なく出来る。

スロープを、出来る限り長くしたので、傾斜が緩やかになっている。

小さな段差用に、取り外しの出来る 携帯スロープも、トシちゃんが、余った材料で 作っていた。

本当に、二人の匠に 拍手!! 「ありがとう!」


おっちゃんが、帰り際に 何やらキョロキョロと辺りを見回しているので、 「どないしたったん?」と聞くと
「わし、カナヅチ どこへやったんやろ? あれっ?鉛筆もないぞ??」と言う。

「おっちゃん、カナヅチは、ズボンのお尻ポケットに突っ込んである。 鉛筆は 耳!」

「おっ! そうやった そうやった。」

惜しいとこで、 寄る歳の波に勝てなかった 村の匠であった。


プチ改造ビフォーアフターその1

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時には、親切も 迷惑なもののようだ



リハビリセンターの中には、(正式な名称は忘れたが)介護住宅相談窓口のようなものがあり、専門のアドバイザーが、いろいろ相談にのってくれる。


トシちゃんと、実家をバリアフリーにするための相談にいった。

すると、すでに「チームアイちゃん」のスタッフから、今のアイちゃんに必要な介護情報が連絡されており、どんな改造をすればよいか、説明してくれた。
そして、実際に、家を見に来てくれるというのだ。 
なんと、ありがたいこと! 早速、日時を決めて来てもらうことにした。



実家は、大正時代に建てられた古家で、藁屋根にトタンをかぶせた屋根、玄関を開けると、いきなり土間、右手に牛小屋を改造した子供部屋、、、と、 とにかく何から何まで超クラッシックな田舎家である。
段差も てんこ盛り。

今は使っていない子供部屋をアイちゃんの部屋にしようということは決めているのだが、あとはさっぱり。



センターから、アドバイザーの人と理学療法士の先生が来られ、アイちゃんのベッドを置く予定の部屋の間口や、トイレ、洗面所、風呂、アイちゃんが行きたがるであろう仏間など、要は家の中を全部見て回られた。

車椅子が通る幅があるか、訪問入浴を利用する場合アイちゃんの部屋に浴槽を置くスペースはあるかなど、巻尺片手に、それはそれは手際よく測ってはメモしていた。

それから、スロープを付けた方が良い場所手すりがあると良い箇所、どの向きにベッドを置けば介護し易いかまで、アドバイスをしてくれた。

水回りの改造は、かなり費用が嵩むことや、今のアイちゃんの状態ではトイレで補助しながら、用を足すこと、自宅の浴槽で入浴することは難しいとの理由からやめることになった。


結局 改造する所は、アイちゃん部屋になる予定の子供部屋の、片開きのドアを2枚の引き戸にする
玄関からアイちゃん部屋までの土間と、仏間に行くまでにある30センチほどの段差の箇所をスロープにする。この二つに決まった。



「介護のための改造の申請を市にすれば補助金が下りるので、そうされては?」

とアドバイスをもらったのだが、トシちゃん「自分で家直します。」と即答!

みんな「えっ?」と驚いた顔。

でも、私は「だよな?絶対そう言うよな。」と一人納得。

トシちゃんの今の心の声を文字にすると、たぶん、こう、、、
「申請したら、許可が下りるのにまた日数がかかるやないかい! これくらいの直しやったら、わしと、3隣保のあれ(村の大工のおっちゃん)とで出来る。

それでもアドバイザーの人は、
「費用が少しでも掛からない方がいいですし、大工さんもご紹介させていただきますよ。」と優しく言ってくれる。

「わしは、おかあちゃんを早よ連れて帰りたいんじゃ!!」という声をお腹に押し込んで
「ありがとうございます。何とか出来ますんで。」と再度、丁重に断ったトシちゃん。

アドバイザーの人も、これ以上は、と思われたのだろう
「そうですか、何か困ったことがあれば いつでも相談してくださいね。」とだけ。


傍で見ていた私は、ハラハラドキドキもんであったが、やれやれ(^^;)。

センターから御足労かけた方々に、ひたすら頭を下げつつ車を見送った。




さあ!トシちゃん 言ったからには頑張って改造してや!・・・って おいおい、もう 大工のおっちゃんの家に行きよるやないかー!!

さて二人は、見事な匠の技(笑)を見せてくれるのだろうか?
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